
研究内容 / Researches
酸化還元還元反応は、生命活動・物質開発・環境保全などあらゆる場面において、基本的かつ重要な化学反応です。我々は、「生体酸化還元」「化学的酸化還元」「電気的酸化還元」に焦点を当てながら、生命現象の人工的な制御方法の開発や有機合成化学における有用な触媒開発などに取り組んでいます。
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Arai Lab.
Biolodical redox
Chemical redox
生体分子の酸化還元
化学的酸化還元
電気的酸化還元
Electrochemical redox
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/ 酸化還元酵素の模倣分子開発 (有機合成研究・生命有機化学研究・細胞生物学研究)
01
「人工分子を用いて生命現象を制御できるか?」
酸化的な環境にある細胞小器官の一つ、小胞体(ER)の酸化還元恒常性は様々なER内在酸化還元酵素(ORase)によって保たれています。例えば、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)ファミリーおよびペルオキシレドキシンファミリー、プロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)ファミリーは、それぞれ活性酸素種(ROS)に対する抗酸化反応とタンパク質の構造化(フォールディング)をコントロールしています。これらの機能を化学的に模倣することは、フォールディング病(アルツハイマー病など)やROSによる癌化の抑制の観点から重要です。我々は高い酸化還元活性を有する人工分子を有機合成手法を駆使して作成し、その生理活性を試験管内および細胞レベルで調査を行っています。最終的には各種疾患治療薬としての応用を目指しています。
Protein Disulfide Isomerase (PDI)

図1 酵素の機能と構造をよく観察して模倣分子をデ ザインします。

図2 有機合成手法によって目的の分子を作ります。合成後はヒトのモデル培養細胞を用いて、薬理効果などを調査します。
02
/ タンパク質フォールディング機構解明 (生物物理学研究・生化学研究)
「タンパク質はどのように折りたたまる(フォールディングする)のか?」
細胞において、タンパク質はアミノ酸がペプチド結合で連なった鎖として合成されます。しかしタンパク質は普通、ある特定の三 次元立体構造に折りたたまれて(フォールディングして)初めて生理機能を発揮するため、ただの鎖状のペプチド鎖では生理学的に意味がありません。フォールディング酵素の助けを借りて、構造をもたないポリペプチドは、天然構造へ効率よくフォールディングすることができます。フォールディングが失敗(ミスフォールディング)してしまうと、本来の生理活性なタンパク質ではなく、アルツハイマー病、パーキンソン病、糖尿病など、多くの深刻な疾患の原因になることもわかっています。我々は、「タンパク質がどのようにフォールディングするのか?」だけでなく「フォールディング酵素がどのように反応を補助するのか?」、「何が原因でミスフォールディングするのか」など多角的な視点からアプローチしています。クロマトグラフィーや電気泳動など分析化学的な手法を駆使しこれらの疑問を解明します。
